こころの不調による「7.3兆円」の社会損失──企業が避けて通れない健康経営の真実──メンタル不調の早期介入と予防

メンタル不調は“静かに企業を蝕む疾病”——その実態は、想像をはるかに超えて重い。
日本経済新聞11月30日付の記事が示したのは、年間7.3兆円という、にわかには信じがたい数字だ。

この規模感を正しく理解するために比較すると——

  • がんの経済損失:約3兆円
  • たばこによる損失:約2兆円

これら国民的疾患・社会問題として知られる領域を “軽く上回り、それぞれの2倍以上” に達するのが、いま企業内で密かに進行しているメンタル不調のコストである。

つまり、
企業がタバコ対策やがん対策以上の熱量でメンタルヘルスに投資すべき理由が、すでに数字として成立している。

にもかかわらず、現場では「忙しいから」「本人の問題だから」と後回しにされ、
リスクは静かに、しかし確実に積み上がる——
最も危険なのは、この“静かなる破壊”に企業側が気づいていないことだ。

もはやメンタル不調は個人の弱さではない。
国家レベルでGDPを揺るがす“構造的リスク”であり、自社の財務を直撃する最大の経営課題でもある。

この記事では、日経のデータを足場に、
医学的・統計的観点から「放置したときに何が起こるのか」を冷徹に解剖していく。

患者数の増加スピードは、すでに“社会現象”の域にある

日経の記事に示された推定外来患者数の推移は、静かだが恐ろしく明確な曲線を描いている。

  • 2002年:80万人台
  • 2023年:160万人超

わずか20年で 約2倍
これは単なる「増えている」という話ではない。感染症のような一過性の流行ではなく、社会そのものが恒常的に人の精神を蝕む構造へ変わってしまったことを示す長期トレンドだ。

人口減少社会であるにもかかわらず、患者数のみが上昇する——これは異常事態である。
特に、10代・20代・30代・40代という 本来もっとも健康であるべき年代が軒並み増えている
生産年齢人口の中核が静かに疲れ、静かに壊れ始めている。

メンタル不調は“心の弱さ”ではなく、全身に波及する進行性の疾患である

医学的に見れば、精神的ストレスは“気分の落ち込み”などの曖昧な問題にとどまらず、非常に具体的な身体的ダメージへ進行する。

ストレス・うつ・不安症が慢性化すると、次のような変化が生じることが研究で確立している:

  • 自律神経系の破綻
     → 心拍数が不安定になり、不整脈・動悸が起こりやすくなる
  • 免疫機能の低下
     → 風邪・感染症が重症化しやすく、治りにくくなる
  • 認知の歪みの固定化
     → 判断力・集中力が落ち、仕事のミスが増える
  • 睡眠障害 → 内分泌系へのダメージ
     → ホルモンバランスが乱れ、さらに気分が悪化する“悪循環”に入る
  • 二次的な生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症)の発症リスク増大
     → 精神疾患は身体疾患の引き金にもなる

つまり、メンタル不調とは脳だけの問題ではない。
全身的な生理機能の崩壊を伴う、進行性・全身性の医学的疾患である。

そしてこれは個人の生活だけでなく、
企業の生産性・安全性・持続可能性すべてに連鎖して影響を与える。

“静かに進行する”という点こそが、最大の恐ろしさである

多くの身体疾患は痛みや発熱で気づく。
だがメンタル不調は、気づいたときには既に深刻化している。

  • 「最近集中できない」
  • 「ちょっと眠れない」
  • 「疲れが取れない」

この“ささいな変化”が、数ヶ月〜数年のうちに全身症状へ転落する。
そしてこのタイミングで職場では、
生産性の落ち込み・判断ミス・コミュニケーション不全・離職 が一気に現れる。

本人も会社も“原因が見えないまま”損失だけが膨らむ。
これこそが、メンタル不調が持つ最も破壊的な性質だ。

生産性の低下コストは、企業が想像する以上に深刻である

メンタル不調が及ぼす経済損失の内訳として、日経は次の3つを挙げている。

  • 欠勤(アブセンティーイズム)
  • 出勤しているが生産性が落ちている状態(プレゼンティーイズム)
  • 精神科・心療内科の医療費

このうち最も深刻で、しかも企業が全く把握できていないのが、
プレゼンティーイズム――“出勤しているのに機能していない状態” だ。

数字が示す「静かに崩れる組織」の実像

医学的な研究では、主要なメンタル不調が各職能に与える影響が明確に示されている。

  • 睡眠障害 → 意思決定能力が20〜40%低下
     → 管理職・リーダー層の判断が鈍くなる
  • 不安症 → 注意集中の障害で作業効率が30%低下
     → ミス増加、クオリティ低下、生産ラインにも影響
  • うつ症 → 認知スピードが健常群の約60%に低下
     → 書類処理、事務作業、企画、営業すべてが鈍化

とくに恐ろしいのは、
本人が「仕事はしている」と思っていることだ。

実際には、

  • 判断の遅延
  • 単純作業のミス
  • 再提出・手戻りの増加
  • クリエイティブ業務のブレーキ
  • 周囲とのコミュニケーション遅延

など、小さな生産性の低下が積み重なり、
部門全体のパフォーマンスを数ヶ月単位で落としていく。

決算書に載らないからこそ、最も危険な“隠れ損失”

欠勤や医療費はまだ見える。
しかしプレゼンティーイズムは、

  • 数字に現れない
  • 評価シートにも載らない
  • KPIにも反映されない

つまり 可視化不可能な「見えない損失」 として積み重なる。

その規模は、米国の研究では

欠勤の3〜5倍

に達するとされており、
これは日本企業にも当てはまる。

特に大企業ほど、分母が大きく、部署数も多いため、
わずか5%の生産性低下が、年間数十億〜数百億規模の損失に直結する。

それでも経営層が気づけない理由はただ一つ──
現場では「働いている」という事実だけが残るから だ。

実際に、筆者も産業医として大企業の中で社員さんの面談をしていると近年、現場レベルでもこの「プレゼンティーイズム」問題が非常に多くなってきている実感がある。

“働いているふり”ではない。“働けないのに出社している”のが現実

プレゼンティーイズムは、医学的には、脳・自律神経・ホルモンの複合的な不調により、

  • 思考スピード
  • 判断速度
  • 集中力
  • 社会的認知
  • 作業持続力
  • 感情の安定性

これら全てが低下している状態と言える。

つまり、
身体機能的に“仕事ができない状態”なのに、組織は正常稼働している前提で扱ってしまう。
ここに最大の断絶がある。

プレゼンティーイズムが企業全体に広がると何が起きるか

部門ごとに以下のような連鎖が生じる。

  • 指示が遅れる
  • 手戻りが増える
  • 管理職が疲弊する
  • 職場の空気が悪化
  • 次のメンタル不調者が出る
  • 離職が増える
  • 新人が育たない
  • 業務クオリティが落ちる
  • クライアントからの信頼が低下する

企業にとっての恐ろしさは、
これらが 半年〜1年かけて確実に沈降していく“遅効性の毒” だという点である。

誰も気づかないまま、組織がゆっくり弱っていく。
その間、損失は雪だるま式に膨らむ。

結論:プレゼンティーイズムへの対策こそ、日本企業が最も投資すべき領域

表面上は普通に働いているように見えても、
実際は 機能していない社員が一定数存在する状態 は、
企業の生産性にとって“最大級の静かな危機”である。

そしてこれは、

  • Medi Face社が提供する「AIドクター」による早期スクリーニング
  • Z産業医事務所による継続的フォロー
  • 経営層へのエビデンスレポート
  • 組織全体に対する予防的介入

など、専門家による早期介入によって確実に減らすことができる。

企業の未来は、表面化しない“見えない損失”を減らせるかで決まる。

さいごに:経営層の方々へ

AIそのものは、やがて完全にインフラとなり、
結局はヒトを救えるのはヒトだけ——Medi Face社としての理念です。

私たちMedi Faceは、AIドクターという技術を開発してきました。
しかし、誤解してはならないのは、AIがすべての問題を解決するなどとは一度も考えていないということです。

AIはやがて、空気や水のように社会を支える“当たり前のインフラ”となるでしょう。
だからこそ、その上で問われるのは 「人間が人間である理由」 です。

喜べば浮かれ、理不尽に直面すれば怒り、
合理性より感情が先立つ——
私たちは本質的にそういう生き物です。
AIのロジックだけで、こうした人間の揺らぎを一刀両断できるとは思っていません。

しかし一方で、AIは “人が人を救うための戦力” を飛躍的に増幅する。
現場の先生方とAIがタッグを組むことで、これまで見落とされてきた初期サインを拾い、
「プレゼンティーイズム」という巨大な社会損失領域に早期から介入できる時代が、すでに始まっています。

Medi Faceグループは、

  • AIドクター (Medi Face社開発)
  • 若手産業医チームによる「Z産業医事務所
  • 医療アクセスの壁をなくす「Mente」オンラインクリニック

これらすべてを“企業のための包括的メンタルヘルス・インフラ”として統合し、
各企業の経営層と密に連携しながら運用していきます。

そして何より——
医学生の頃から、泥水をすすりながら経営と商売のリアルに向き合ってきた私だからこそ、
綺麗事では終わらない“経営者の視点”で判断できることがある。

企業を動かし、人を守るには、理論と現場経験の両方が必要です。
私たちMedi Faceは、その双方を武器に、
これからも貴社と並走し続けます。

人を救うのは、人。
その力を最大化するのが、AIドクター。
そしてその両軸を扱えるのが、私たちMedi Faceです。


Medi Faceの中心にいるのは、医師です。
代表は精神科医・産業医として現場を知り、
株主・顧問には多数の現役医師が参加しています。

AIはあくまでツール。
その力をどう生かすかは、私たち“人間の医師”にかかっている。

私たちは、メンタルヘルス領域に特化した
プロフェッショナル集団です。
企業の「人」を守るために、医療とテクノロジーの両軸で支えていきます。

近澤徹 医師の写真

医師監修:精神科医 近澤 徹

Medi Face代表医師、精神科医、産業医。
精神医療と職場のメンタルヘルスに関する啓発活動に従事し、
患者中心の医療を提唱。社会的貢献を目指す医療者として、
日々の診療と研究を続けている。

  • 北海道大学医学部卒
  • 慶應義塾大学病院
  • 名古屋市立大学病院 客員研究員
  • 日本医師会認定産業医 / 精神科医
  • 名古屋市立大学病院 客員研究員
  • 株式会社Medi Face 代表取締役医師
  • 株式会社Legal Doctor 代表取締役医師
  • 須賀法律事務所 顧問医師
  • 日韓美容医学学会 常任理事
  • FRAISE CLINIC 統括医師
  • 日比谷セントラルクリニック 副院長
  • EIGHT CLINIC渋谷 統括医師
  • アイエスクリニック六本木 統括医師
  • ルナビューティークリニック池袋 統括医師
  • 医療法人伯鳳会 赤穂中央病院
  • 編集部

    Medi Face Journal編集部は、医療・テクノロジー・キャリア・ウェルビーイングといった領域を横断し、“いま本当に知るべきこと”を掘り下げて伝える専門メディアチームです。 医師・研究者・編集者・エンジニアなど、異なる背景を持つメンバーが集い、精神医療から産業ヘルスケア、医療人材のリアルまで、多角的な視点で「医療という営み」の本質に迫ります。

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